AIが旅をつくる時代──Airialと次世代旅行ビジネスモデルの台頭
はじめに:旅が“映像”から始まる時代
かつて、旅は雑誌で選ぶものでした。次に、検索で調べる時代がやってきました。そして今──旅の始まりは、TikTokやInstagramの1本の動画から始まる時代に突入しています。
「この景色、行ってみたい」「このカフェ、どこだろう?」そんな衝動を、AIが即座に“現実の旅程”に変えてくれる──それがスタートアップ「Airial」の描く世界です。
Airialとは何か?──ソーシャル旅行×AIの融合
Airialは、2025年にシードラウンドで300万ドル(約4.7億円)を調達した新進気鋭のスタートアップです(出典:Business Insider)。
ユーザーは、TikTokやInstagramの旅行動画やブログ記事のリンクをAirialに貼り付けるだけで、AIがその旅の全体像を読み取り、自動で旅程を設計します。
- 動画に映った観光地や飲食店などをAIが抽出
- 移動経路や所要時間、滞在時間を計算し日程化
- 宿泊施設や移動手段の提案と予約リンクの提供
旅行のインスピレーションが「SNS」から「即予約可能な旅程」へと変換される──Airialはこの流れをAIで実現しています。
Airialの技術的アプローチ
Airialの核にあるのは、「幾何学的推論」と「大規模言語モデル(LLM)」を組み合わせた高度なAIエンジンです(出典:TechCrunch)。
MetaやDeepMind出身のエンジニアたちが開発したAlphaGeometryをベースに、以下のような機能が実装されています:
- 観光地の地理関係と移動時間を反映した旅程構築
- 営業時間や混雑予測を加味した最適スケジューリング
- フライト・鉄道・宿泊のリアルタイム情報との連携
これにより、「ただの提案AI」ではなく、「そのまま実行できる旅プラン」を提供することが可能になっています。
Airialのマネタイズと展望
Airialは、以下のような多層的なビジネスモデルを構築しています(出典:Business Insider):
- 予約手数料:航空券やホテルの予約成立時の成果報酬
- 広告収入:レコメンド施設や提携店舗の掲載
- 有料プラン:プレミアムな旅程編集機能や複数人編集機能
- クリエイター課金:インフルエンサーが旅程を販売し収益化
現在はベータ版が公開されており、今後モバイルアプリのリリースも予定されています。
注目の旅行AIスタートアップ:1社ごとの詳細紹介
1. Mindtrip(マインドトリップ)
Mindtripは、AIコンシェルジュ型の旅行提案サービスで、ユーザーの性格やそのときの気分、興味関心、時間、予算に応じて最適な旅程をレコメンドしてくれます。
たとえば「静かに読書できる旅がしたい」や「夜景を見ながらひとりで考えたい」など、定量化しづらい曖昧なニーズにも対応。まさに“感情起点の旅”を設計できるサービスとして注目を集めています。
将来的には、心理プロファイリングとの連携やマインドフルネス領域との融合も見据えている野心的なプロジェクトです。
2. Layla(レイラ)
Laylaは、チャット形式で旅行の提案や相談ができるAIパーソナルアシスタント。ユーザーが話しかけるだけで、会話を通して旅程を形にしてくれます。
「今週末、2泊3日でどこか行きたい」と話しかけると、季節や天気、距離、予算を加味して「この温泉地が空いていますよ」「この美術館とカフェ巡りはどうですか?」と返してくれる設計。
会話UIによって“旅行予約サイトにありがちな煩雑さ”を極限まで排除し、スマートスピーカーや音声UIとの連携も構想されています。
3. Pilot(パイロット)
Pilotは、旅行の計画を複数人で編集・共有できる「SNS型の旅行設計アプリ」。友人や家族と予定をすり合わせたり、おすすめの場所をコメント付きで残したりと、共同体験を重視した仕組みが特徴です。
旅行終了後もその思い出を「旅の記録」として保存・公開できるため、単なるスケジューラーを超えて、旅を“記録・共有・継承するプラットフォーム”としての側面も持っています。
4. TrovaTrip(トロバトリップ)
TrovaTripは、インフルエンサーが自ら旅を企画し、フォロワーをツアーに招待できる「コミュニティ主導型旅行販売サービス」です。
InstagramやYouTubeで影響力を持つ人が、自分のライフスタイルや価値観を反映した旅程を設計し、フォロワーが参加申し込みをする仕組み。旅そのものが“ブランド体験”になるのが特徴。
参加者とのリアルな接点を創出できるため、教育系・ヨガ系・写真系・自己啓発系など、テーマ性の強いジャンルで人気です。
旅行業界のトレンドと未来
- 検索エンジンではなく、SNSが旅の出発点に
- AIによるスケジューリング・ロジスティクスの自動化
- 「誰かと作る」旅、「映像から始まる」旅の一般化
- エシカル・ローカル・持続可能な旅への移行
Airialをはじめ、今回紹介した各スタートアップはいずれも、こうした変化を加速させるキープレイヤーです。
おわりに:旅は“設計される”ものになるのか?
AIが旅を設計し、SNSが旅の出発点となり、動画を見た数分後には旅程が手元にある──そんな時代が、すでに始まっています。
Airialは、まさにその最前線。旅を“考える”ものから“感じた瞬間に予約する”ものへと変えていく存在です。
そして今回紹介した各社が描く旅の未来は、それぞれ異なる角度から「体験の再定義」を進めています。
あなたの次の旅は、検索ではなく、動画から──あるいは会話から、コミュニティから始まるかもしれません。